工業高校向け出前授業でバーサライタを作ってみた話(1)

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1. 出前授業のきっかけ

私が所属する企業では、だいたい毎年一回、地元の工業高校に出向いて出前授業を行うという活動を行っています。
出前授業の内容については特に指定がないのですが、趣旨としては各企業がビジネスについて話したり、自社のビジネスを体験してもらうという趣旨であったので、以前から基板の組み立てをメインに行なっていました。
前回までは他の担当者さんが行っていたのですが、今回自分に出番が回ってきたので、企画~準備まで自分でやってみた次第です。

2. コンセプト

前述したように、すでに出前授業自体に一定のコンセプトがあったので、大人しくそれに従うことにしました。自分の会社は電子回路基板製造を行っていますので、まあ基板組立でもやってもらうかなと思い、色々と考えていきました。

2.1 基板組立の題材を考える

基板組立と言っても、色々な基板が考えられます。今回は工業高校向けの内容ということもあり、下記の点に着目して考えました。

  • 組み立てやすい
    • 流石に1mmピッチのSOPをいきなりはんだ付けするのは難しいと思ったので、すべてDIP部品で揃えることにしました。
  • 動作がはっきりわかる
    • 組み立てて動かしてみたときに、動作がはっきりわかる(動くとか、光るとか)ことを重視しました。そっちのほうが面白いので。
  • 動作原理も頑張れば分かる
    • あまり複雑なことをすると、どうやってその基板が動いているのかわかりにくくなります。そのため、できるだけわかりやすい回路になるような題材を考えました。
      この点に着目して考えたとき、ふと学生時代のオープンキャンパスで、バーサライタ(POVディスプレイ)をやったのを思い出しました。
      今ちょっと調べてみると、母校でこのネタをまだ使っていたことを知り、やはり基板組立ではバーサライタは定番なんだろうなと思いました。

2.2 どんなバーサライタを作るのか考える

一口にバーサライタと言っても、その形状は様々です。モーターで回して文字を出すものから、手で振って文字を出すもの。外形も長いものから短いものまで様々です。
漠然と考えても仕方がないので、下記の制約を決めて作ってみました。

  • 基板外形は100x100mm以内(中華系基板製造会社で安く仕上げるために)
  • LEDは16個つけたい(多いほうが面白い)
  • マイコンはATtiny85などのDIPパッケージがある小さいものにする
  • 部品点数はなるべく減らす
    その結果、ATtiny85にシフトレジスタをつなげて、シフトレジスタ経由でLEDを点滅させる構造に落ち着きました。

3. 試作基板設計・制作手順

次に設計する訳ですが、いきなり基板を発注して動かないと悲しいので、CNCを使って試作基板を作ることにしました。

3.1 基板設計・製造

基板設計にはKiCADを使用しました。よっぽど特殊な使い方をしない限り、業務でも十分利用できるレベルのCADだと思ってます。
基板設計の手順には色々とあると思いますが、今回は下記の手順で行いました。

3.1.1 回路設計

まず回路設計をしないといけませんが、今回のシステムは大した回路ではないので、単純にATtiny85とシフトレジスタを接続し、シフトレジスタの出力に抵抗とLEDをつなげるだけです。詳しい配線などはChatGPT君に聞けば教えてくれます。
ただここで注意したいのが、ChatGPTくんは平気でディスコンの部品を選定してくるという点です。設計し終わって部品を買おうと思ったら、ディスコンになっててピン互換の部品もなかったみたいな悲劇が起きる前に、ちゃんとディスコンではないか確認しましょう。あと、新規設計非推奨とか書いてあるのも避けましょう。

3.1.2 アートワーク

基板設計が終わったらアートワークです。ほんとはブレッドボードを使って回路の検証とかやってもいいのですが、今回は単純につなぐだけなので省略することにします。
アートワークですが、まあ今回くらいの基板では特に注意する点は無いのですが、CNCで作る基板を設計する場合は、デザインルールの設定には注意する必要があります。
これは基板を削るCNCの精度や、固定方法の精度などにもよるのですが、先端が0.1mmのVビットを使用する場合は、最小クリアランスは0.3mm以上、配線幅は0.5mm以上が妥当だと思います。これ以上攻めた設定にすると、安定して製造できないと思います。
あと、仕組み上当たり前なのですが、スルーホールは作れません。両面銅クラッドの基板で両面削るか、片面銅クラッドの基板で、もう片面にスズメッキ線を這わせる必要があるので、それを前提に設計してください。

3.1.3 検図

これ案外やらないのですが、基板を削る前に一回くらいは検図をしましょう。A4用紙に印刷して、穴径やリードのピッチなどは必ず確認したほうがいいです。このあと行うCNCの工程も結構長いので、最後に失敗に気付くと萎えます。

3.1.4 ガーバーデータ出力

問題なさそうなら、KiCADでガーバーデータを出力します。これもググるか、ChatGPT君に聞けばわかります。

3.1.5 CAMでのGコード生成

ガーバーデータを出力できたら、FlatCAMを使ってGコードを生成します。FlatCAMも結構使い方にコツがありますが、公式のドキュメントを読んだり、ググったりChatGPT君に聞けばだいたいわかります。
特に注意すべき点とすれば、送り速度でしょうか。FlatCAMの標準ではXY方向の送り速度が120mm/minになっていますが、これは若干速い気もするので、お使いのCNCにあわせてもう少し落とす必要が出てくるかもしれません。

3.1.6 出力されたGコードの確認

Gコードが出力されたら、シミュレーターなどを用いて一応確認しておきましょう。特に送り速度には注意してください。

3.1.7 CNCでのGコード実行

問題ないGコードが生成されたら、いよいよCNCで削ります。もしVビットを使って削る場合は、高さマップを生成して補正できるGコード送信ソフト(CandleとかCNCjs)を使いましょう。

3.2 組み立て

基板が完成したら、普通にはんだ付けして組み立てます。なお、温度調節ができない安いコテではんだ付けすると、温度が高すぎてすぐに銅食われを起こしてパターンがなくなるとか、パターンごと剥がれてしまう危険がありますので、できるだけ温度調節ができるハンダゴテではんだ付けしたほうがいいと思います。HAKKOの安いステーションタイプでもいいので、買いましょう。

3.3 動作確認

基板が完成したら、動作を確認してみましょう。問題なく動作したら完成です。もし正常に動作しない場合は

  • はんだ付け品質を疑う
    • 未着部分が無いか確認
    • ブリッジによるショートが無いか確認

4. 終わりに

ひとまず、今回は出前授業を行うまでの一部について話しました。またぼちぼち更新していきます。

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